2026-04-21
【コラム№62】猫にも花粉症はあるの?
今回よりコラムを担当させていただく獣医師の小久保と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
桜の開花宣言も出され、いよいよ春本番を迎えようとしておりますが、会員の皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。春は寒さもやわらぎ、外に出るのも気持ちの良い季節ですが、一方で花粉症でつらい思いをされている方も少なくないのではないかと思います。かくいう私も花粉症ですので、この時期はマスクとティッシュが手放せません。春らしい陽気を感じるたびに嬉しくなる反面、花粉の飛散量が気になってしまうのもこの季節ならではかもしれません。窓辺でのんびり日向ぼっこをしている猫の姿を見ると、ようやく冬が終わったのだなと感じます。
毎年のように「今年は花粉が多い」「昨年より飛散量が多い」などの話題を耳にしますが、では実際に花粉はどのように測っているのだろうと思い、調べてみました。現在も花粉観測には「ダーラム法」と呼ばれる方法が広く使われており、スライドガラスに付着した花粉を顕微鏡で数えているそうです。機械がすべて自動で判定しているのかと思っていましたが、こうした地道な観測に支えられて花粉情報が成り立っているのだと思うと、少し見方が変わる気がいたしました。
そこで今回は、「猫にも花粉症はあるのか?」というテーマでお話ししたいと思います。
結論から申しますと、猫でも花粉をはじめとする環境中のアレルゲンに反応して症状が出ることがあります。ただし、人の花粉症のように、くしゃみや鼻水、目のかゆみが中心になるとは限りません。猫では、花粉などの環境要因に対する反応が、皮膚のかゆみとして現れることが多く、顔まわりや耳、首をしきりにかく、体をなめ続ける、毛が薄くなる、細かなかさぶたができるといった変化で気づかれることが少なくありません。耳の赤みや外耳炎を伴うこともありますので、春先にいつもより顔まわりを気にしているようであれば注意して見てあげるとよいと思います。
もちろん、猫でもくしゃみや涙目が見られることはあります。しかし、そうした症状は花粉だけでなく、感染症やハウスダスト、その他の刺激によっても起こります。そのため、「春になってくしゃみをするから花粉症」とすぐに決めつけることはできません。猫では、人と比べると皮膚症状のほうが目立ちやすいという点が特徴のひとつです。
では、どのような場合に花粉との関係を疑うのでしょうか。ひとつの目安は、毎年ある季節になるとかゆみが強くなることです。春先になると顔や耳をよくかく、暖かくなる頃に皮膚の調子が悪くなる、といった場合には、花粉を含めた季節性の環境アレルゲンが関係している可能性があります。ただし、猫のかゆみの原因は花粉だけではありません。ノミやダニ、真菌、食事の影響、細菌や酵母の二次感染などでも似たような症状が出ますので、実際にはそれらをひとつずつ確認しながら考えていくことが大切です。
ご家庭でできる工夫としては、まず花粉を室内に持ち込みにくくすることが基本になります。外から帰宅した際に衣類についた花粉を軽く払うこと、寝床や毛布を清潔に保つこと、室内をこまめに掃除することは、猫が過ごす環境を整えるうえでも役立ちます。また、猫が嫌がらない範囲でブラッシングをしたり、固く絞ったタオルで被毛の表面をやさしく拭いたりして、体についた花粉を減らすこともひとつの方法です。
一方で、良かれと思って頻繁にシャンプーをしたり、強くこすって手入れをしたりすると、かえって皮膚への刺激になることがあります。猫は犬以上にお手入れのストレスが強く出ることもありますので、無理をせず、その猫が受け入れられる範囲で行うことが大切です。
症状が軽い場合には、生活環境の見直しだけで落ち着くこともありますが、かゆみが強い場合や、皮膚を傷つけるほど掻いてしまう場合には、動物病院での診察をおすすめいたします。特に、耳を激しくかく、脱毛が広がる、赤みやかさぶたが増える、くしゃみや咳が長く続くといった場合には、早めに相談した方が安心です。花粉が関係しているように見えても、実際には別の病気が隠れていることもあります。
春は飼い主様にとっても、猫にとっても体調の変化が出やすい季節です。「最近、耳や顔をよくかくようになった」「春になると毎年皮膚の調子が悪い」そのような変化がありましたら、花粉を含めた環境アレルギーの可能性も少し意識してみてください。日々の小さな変化に早めに気づいてあげることが、猫の快適な生活につながります。
これから会員の皆様の猫との暮らしに役立つ内容を、できるだけわかりやすくお届けしていければと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
