2022-11-22
【コラム№22】猫の遺伝子疾患
こんにちは、ZCCの花島です。
11月になりすっかり気温も下がり、寒さを感じる季節になりました。この時期は紅葉や七五三や文化祭などに出かける機会も多くなり、コロナを含む感染症には十分ご注意ください。
猫の感染症といえば、この時期「猫ウィルス性鼻気管炎」や「カリシウィルス感染症」があります。どちらも猫風邪と言われる感染症ですから人と同じような、くしゃみ・鼻水・発熱・食欲減退などがありますが、猫だけによく見られる症状として「猫ウィルス性鼻気管炎」は目ヤニがあります。目ヤニを拭うことにより汚れが顔中に広がり顔面の不潔感が見て取れます。外猫などでよく目ヤニで目が塞がれている子は風邪を引いているのですね。「カリシウィルス感染症」は口内炎や舌炎が見られるのが特徴ですから症状が判断できるように覚えておくと良いと思います。
今回は感染症ではないのですが最近注目を浴びている、猫の「遺伝子疾患」、「先天性の病気」などと言うと判り易いかもしれません。スコティッシュフォールドの骨軟骨異形成(四肢や尻尾が太くなり動きが悪くなる)やメインクーンの肥大性心筋症(突然死)などは皆さんよくご存知かと思います。これらの病気は遺伝子に原因が有る訳ですからDNAを調べることにより多くの「遺伝子疾患」を防ぐことが可能となる訳です。可愛い子猫を購入したにも関わらず、我が子がこの様な病気を患うことは飼い主さんの負担や悲しみになるので、繁殖する上でこれらの疾患を知り、避けるべき組み合わせでの繁殖をしていくことが重要だと思います。
遺伝子検査をすると「クリア」(遺伝子病の原因遺伝子を持っていない)、「キャリア」(遺伝子病の原因遺伝子を一つ持っているが発症リスクがある疾患もある)、「アフェクテッド」(遺伝子病の原因遺伝子を二つ持っている)と言われ、その遺伝子疾患が発病するかどうかの判断材料となります。アフェクテッドでも疾患により100%発病するという訳ではありません。
それでは代表的な遺伝子疾患について紹介したいと思います。
① ピルビン酸キナーゼ欠損症:アビシニアン、ソマリなど多くの猫に見られます。赤血球中のピルビン酸キナーゼ酵素が不足し赤血球が破壊され、生後半年以内に貧血となります。決定的な治療法はないので対症療法で経過を見ていきます。この病気は劣性遺伝ですから片方の親からPK欠損遺伝子を引き継いでも問題はありませんので確実に遺伝子検査をして繁殖をしていくことが重要です。
② 多発性嚢胞腎症:ペルシャ、アメリカンショートヘア、エキゾチックなど多くの猫に見られま す。腎臓に多数の嚢胞が出来、腎機能が低下する病気です。この病気は優性遺伝ですので片方の親から遺伝子を引き継ぐと発症する可能性があります。こちらも確実に遺伝子検査をして繁殖をしていくことが重要です。
③ 肥大性心筋症:メインクーン、ノルウェージャンフォレストキャット、ラグドールなどの大型猫に多く見られます。心臓を動かす心筋が厚くなることにより心臓に蓄える血液量が減り、呼吸困難や血栓や突然死などが見られます。この病気は優性遺伝ですので片方の親から遺伝子を引き継ぐと発症する可能性があります。こちらも確実に遺伝子検査をして繁殖をしていくことが重要です。
以上、代表的な「遺伝子疾患」について紹介しました。最近は検査も簡単に手頃な検査料金で行える様になりました。
「遺伝子疾患」を引き継いだ悲しい子猫を世に出さないようぜひ遺伝子検査を実施してみてください。